2024(令和6)年6月15日にオンラインで開催された、京都動物愛護センター様主催の「ペットのための終活セミナー」講師を5年連続で担当させていただきました。
当日は下記の内容で講演を行いました。
・京都動物愛護センターの取り組み(センター職員様)
・ペットのためにお金を残す方法は?(弊社代表石部)
・ペット後見の取り組みについて(認定NPO法人人と動物の共生センター奥田代表)
・終生飼育に向けて、今、私たちができることは?(ペット預かり施設shippo-family高岡様)
わんむすびではペットのためにお金を遺す方法というテーマで司法書士の監修のもとでまとめた内容をお話しさせていただきました。以下その内容をご紹介します。
遺言
日本の法律ではペットに直接遺産を残せないため、ペットをお世話する人あるいは団体にお金を託す形式です。相続税のかからない金額(5000万円以下)で骨肉の争いが起こるケースが圧倒的多数ですので、遺産の総額に関係なく遺言書を遺されることをお勧めしています。
遺言は自筆証書遺言と公正証書遺言の2つの方法がありますが、前者は紙とペンと印鑑があれば誰でも無料で書ける反面、法的に無効になったり改竄されたりする恐れがあり、本当に直筆か疑われることも多いです。そのリスクを避けるために専門家を呼び、チェックを入れて公証役場に保管してもらうことも可能です。
遺贈
遺贈とは遺言によってご自身の財産を託す先を個人・団体問わず事前に決める方法です。これも遺言書が必須ですが「いくらの財産を引き継いでもらう代わりに、自分がこんな状態になったらペットのお世話を頼みたい」と条件をつける方法(負担付遺贈)も使えます。
通常の相続なら子や孫など血縁関係者だけですが、遺贈なら相続の権利を持つ人以外の人物や団体に遺産の一部を譲ることができます。そのため、近年では遺贈寄付に力を入れる学校法人、NPOや財団も多数見られます。ただしペットの将来を託す人や団体に遺贈される場合には、本当に信頼できるか事前に見極めなければいけません。
贈与
贈与とは当事者の一方が自分の財産を相手に与える意思表示をして、相手がそれを承諾した時に成立する方法です。必ずしも正式な契約書は必要ではないですが、税務調査などでのトラブル防止のために条件を明記した贈与契約書作成を推奨しています。
遺言を書かずに、誰にどんな条件で、どの程度の金額をペットのために遺すかを決めて、飼い主さんがご健在のうちにペットの飼育を託すという契約も可能です。生前贈与では財産をもらう側からOKをもらえた場合、ご健在のうちからお金を動かせる可能性があります。
ただし金額によっては多額の贈与税を課せられますので、贈与機会は一括か分割か、後者の場合は毎年いくらずつにするか税理士へのご相談が必須となります。
家族信託
家族信託では成年後見ほどの制約がなく、ご本人がご健在のうちから財産の管理を話し合うことができます。一般の相続と違ってお孫さんの代までの相続のお話も可能ですが、制度が複雑だったり贈与以上にまとまった資金が必要だったりするデメリットもあります。
生命保険
保険会社によっては、生命保険で積み立てた保険金をペットの預り施設に託すことで、飼い主さんの死亡後に遺されたペットを生涯お世話してもらうことも可能です。この場合は飼い主さんがご存命のうちにお金を動かせませんので、病気や施設入所などで飼育を続けられなくなった場合には贈与や少額短期保険など別の手段を用いることになります。
少額短期保険の内容によっては、飼い主様ご本人が入院したり、障がいを負ったりした場合に、ペットを身内や施設等に預ける費用を工面する方法、保険金や入院給付金等でもしもの時の老犬・老猫ホームへの負担を抑えつつ、専門家にお世話してもらう方法もあります(具体的な内容・条件・保障範囲は各保険会社に相談必須)。
ただし年齢によっては、贈与などで迅速に対応したほうがいい場合もあるので、まずは専門家にご相談ください。