福祉分野における猫に関する勉強会(3)

皆様こんにちは!代表の石部です。

前回前々回に続いて、公益財団法人京都地域創造基金さん主催、京都動物愛護センターさんで開催された「福祉分野における猫に関する勉強会」の記事を投稿します。

勉強会の後半では、大阪市の「人もねこも一緒に支援プロジェクト」さんのお話がありました。

これはペットを飼育していて、支援が必要な個人や家族に対し、ペットを含めて家族と捉えて様々な組織と連携して支援を行う団体です。「ペットを支援することは人の生活を支えることだ」という話は同感ですし、人も動物も安心して暮らせる社会を実現すべく”猫から目線”で活動されている姿が印象的でした。

飼い主支援、ひいては人間の福祉を進めていく上で特に重要と思われるポイントをは以下の3点です。

専門家の連携

専門家同士の連携の大きなメリットは、予防的支援の可能性が広がることです。後述する多頭飼育を例に挙げると、一度繁殖してしまった後の支援が難しい反面、2〜3匹の飼育であれば支援がしやすくなります。日頃多くのシニア飼い主さんと接しておられる福祉職の方々が早期発見し、動物病院や支援団体などとの連携で、対人・対動物両面のケアが可能になります。

 

多頭飼育の予防

多頭飼育の背景

多頭飼育には、悪質なブリーダーのほか、飼い主さんの経済的貧困、障碍、孤立、虐待経験など、対人援助が必要な複数の課題が背景にあります。一度動物を意図的に集めてため込んでしまう、避妊去勢手術の必要性を知らないか、知っていても費用を出せない、管理しきれないなどで、気がつけば本人も正確な頭数すら把握できない事例もあります。本人が精神的な問題を抱えているケースも多く、コミュニティの福祉に関わる問題でもあります。

猫の習性

健康な猫は最大で年4回、一度に7匹は子猫を産めます。生後半年で妊娠可能な体に成長することや、元々の”潜む習性”もあって、人間に気づかれないうちに繁殖しやすいです。だからと言って手放してもらうにも、反発されたり隠されたりすることがあり、支援者も傷つくことになりかねないです。保護施設もほとんど余裕はないですし、繁殖前からの行動が大事です。

全頭への避妊去勢手術実施

避妊去勢手術は1〜2頭の飼育の段階からの実施が重要ですので、まずは生活保護担当者など日頃から飼い主さんと接している方に知ってもらう必要があります。前述の通り、猫の繁殖力の高さもあるため、繁殖前の相談が大事です。

手術費用はどうぶつ基金による無料避妊手術が受けられることがあります。この場合は第三者からの申請になりますが、なるべく1回で、一斉に手術を実施すると効果が高まります。

 

猫を含む”家族”としての支援

犬だけでなく猫も室内飼いが広まる中、猫がかけがえのない家族で生きがいだという人は多いです。むやみに飼い主としての行動を否定したり、原因探しに走ったりせず、今後どうするかを考え、小さな変化を重ねながら改善につなげることが大事です。

飼い主さんには問題意識を持ってもらいつつも、介入後の見守り支援が必要になります。猫以外の相談も聞きつつ、福祉職の方々と連携しながら再発支援が行われます。

 

人もねこも一緒に支援プロジェクトさんの取り組み図

グラフィックレコーディング(ファシリテーショングラフィックとも言う)によって、プロジェクトの取り組みが”見やすい議事録”として描かれました。

こちらも是非ご参照ください!

 

まとめ

多頭飼育に限らず、社会問題を発見するたびにその原因を分かりやすい人や組織に求めたがる傾向は少なくありません。実際には問題の背景にはいくつもの要因が重なっており、誰かをすぐ悪者にして、「あいつさえいなければ問題解決する」と考えるのは危険です。排除ありきでは短期的に効果が出てもすぐ振り出しに戻りますし、長期的に効果が出る、持続可能なアプローチが必要と言えます。

また、小さな変化から大きな影響があるという学びもありました。きっかけはペットでも結果として飼い主さんやその家族、支援者との関係が生まれたり、人への支援に繋がったり、できることから少しずつ変化の種を蒔いていこうと思います。