皆様こんにちは!
前回のブログの補足で、家族信託に似た制度との違いについて説明いたします。遺言や成年後見のほか、財産管理委任契約も家族信託に似た点がございますので、ここで取り上げます。
遺言との違い
これまでは委託者(財産を託す人)が亡くなった後、受託者(財産を託される人)にどの財産をどんな条件で譲るかを決めるのは遺言作成がメインでした。しかし、財産継承に条件を付けられず、遺言を作成してもその内容に遺族が不満を持っていたら撤回される、書き方を間違えると無効になるなどのリスクがありました。
家族信託でしたら、委託者が元気なうちから受託者との信託契約を結び、遺言に遺したい内容を確実に実行できます。法律の専門家が契約内容作成に携わることで、ご本人やご家族の想いを尊重しつつ法的に有効な契約を結べます。
遺言の場合は委託者が亡くなられた後にしか内容が有効になりませんが、家族信託でしたら委託者ご本人が存命のうちから財産を受託者に移せます。委託者が認知症になった、体調を崩してペットの飼育を続けにくくなったなど、具体的な条件を決めて契約を結べます。
成年後見との違い
認知症に備えて財産の管理をしたい場合、従来は成年後見制度の利用が主流でした。しかし、その制度内でケアしきれない領域もございますので、家族信託によってより柔軟な対応でケアすることも可能です。
成年後見は、判断能力の低下した方ご本人を保護するための制度です。そのため、贈与や遺贈、積極的な資産の運用や売買ができないことや、財産管理が家庭裁判所の監督下に置かれるなどのデメリットがあります。
家族信託でしたら、認知症発生後にも贈与や家庭裁判所に左右されない資産運用、財産管理が可能で、成年後見であれば毎月必要な家庭裁判所への財産管理内容の届け出も不要です。またペットを含む財産管理を行う人は、2世代以上先も含めて委託者ご本人が選べます。ただし、委託者ご本人が元気なうちでないと家族信託をご利用いただけない点はご注意ください。
財産管理委任契約との違い
財産管理委任契約の場合、委託者は不動産や有価証券などの資産の売却を、ご家族を受託者にして委任するといった契約になります。しかし財産管理委任契約は、ご本人の判断能力があることを前提に結ばれますので、認知症などで判断能力が低下した場合に使えないのがデメリットです。
たとえば親子間で銀行口座の名義変更を行う委任契約を結んだ場合、お子さんを受託者にしても口座の名義は変わりませんので、本人確認が必須となります。つまり、委任契約があっても受託者は財産管理ができません。
家族信託でしたら、信託が始まれば財産の名義は変更されます。ペットの飼育条件について契約を結ばれた場合も同じく名義変更されますので、「健康で判断能力のあるうちから将来に備えたい」という方に向いています。
ご本人に受け入れられやすい形での話し合いを
家族信託にも、受託者は信託財産しか管理できず、他の財産の帰属先を決められない、身上監護権がないなどのデメリットはあります。そうした点もカバーできるよう、ご要望によっては成年後見や遺言も合わせてご提案いたします。
ご両親や義両親の老後が心配だけど「遺言を書いてほしい」「成年後見の相談がしたい」と言いにくい方も、「要介護になった時に十分なケアが出来るよう、家族信託を提案したい」と言えば受け入れられやすいかと思います。話し合いのハードルを下げつつ、ご本人の想いを聞き出すのが大事といえます。