皆様こんにちは!「働き方改革」の話題が連日メディアに取り上げられ、大企業も中小企業も残業時間の上限規制や罰則強化が決まった昨今、日本人の働き方は大きな転換期を迎えつつあると実感しています。元々は人事や広報のコンサルティングで様々な中小企業、店舗、士業事務所、クリニックなどを回ってきた筆者も、この流れが広がって欲しいと願っています。
ヘルパーさんがペットのお世話をするのは法律違反
働き方改革の現場を回る中で気づいた課題が、「介護を受ける高齢者の方々がペットを飼っている時のケア体制が不十分」ということでした。一例として訪問介護の現場で起きている問題を申しますと、ヘルパーさんが世話をできるのは介護保険の被保険者である高齢者ご本人のことだけで、ペットの世話は介護保険の適用範囲外で法律違反となります。つまり高齢飼い主さんがいくら必死でペットのお世話をしても、ヘルパーさんは全く手助けができないのです。そこでケアマネージャーさんがペットの対応に追われるか、ご本人が不自由な体で必死に世話を続ける、入院を拒否するなどして、深刻な事態となっています。
仕事ができる人ほど、親の介護に苦しむ
ご家族にペットの世話を任せるとしても、課題は少なくありません。特に息子さん、娘さんが会社員として優秀であるほど、介護に苦しむのが現状です。
会社員として優秀なほど「介護敗戦」に突き進む
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00107/00004/?n_cid=nbpnb_mled_enew
こちらの記事にも書かれている通り、介護を「目標を設定する仕事」と捉えてしまうと、「成功」「成長」を追い求め、介護する人にもその価値観で接して負担を増やしてしまうからです。人もペットも要介護になれば、今までできたことを諦めることが多くなる「撤退戦」になり、特に認知症は治せない状況にあります。衰えに向き合い、長期的に手を動かすのが辛い状況であれば、ペットのことに目を向ける余裕はなくなるでしょう。
また、介護をきっかけに仕事の最前線から離れ、仕事のモチベーションを失う人も少なくないですし、介護離職で収入が減ればペットのお世話どころではなくなってしまいます。ペットと暮らせないか、暮らせても小型犬や猫限定という人も多く、わんむすびにも「子どもたちに迷惑かけたくないがどうすればいいか分からない」というご相談も受けます。介護は突然始まり、一般的に子育てより長期戦になり、状況は日に日に悪くなります。準備ができていないと兄弟姉妹間のトラブルになりかねないですし、元気なうちの備えが必要です。
高齢者がペットと楽しく暮らすには
高齢者がペットを飼うことは、様々なメリットがあります。
・散歩やペットとの会話により、脳に刺激を受けて規則正しい生活や運動の習慣ができる。
・ペットの世話が生きがいややりがいにつながり、人生の充実感を高められる。
・健康的な生活により、孤立や病気のリスクが減る。
・ペットを通じて近所の方々との会話が生まれ、人とのつながりができる。
つまり、介護予防や医療福祉の観点からも、ペットを飼うことが高齢者の幸せに繋がることも多いのです。
とは言っても、安易にペットを飼うべきでない事情はあります。「責任を持って命を預かる」ためにも、家族・親族、専門家、行政などと相談して、いざという時に頼る人や医療機関、シッターや預かりなどのサービスといった、万が一に備えての準備が必要です。ご自身とペットの年齢を合わせて考えて、成犬や成猫を飼うことや、保護動物の一時預かり、あるいは「飼わない」と決めることも選択肢です。こうした備えをきちんとすれば、充実したシニアライフを過ごせると筆者は考えます。
「生き方改革」の実現へ
老犬・老猫を引き取る施設自体は年々増えてきており、24時間体制の施設やペット介護士など、徐々に預かり体制はできつつあります。しかしペット介護士派遣や専門施設などはまだまだ数が少なく、費用はペット保険が効かず自己負担となります。
ペットも高齢化が進んでおり、高齢ペットの場合は新しい飼い主さんが見つかりにくいのも事実です。解決策としてはそうした預かり施設の受け皿拡大、現役世代の働き方改革による、子育てや介護との両立環境の強化などが挙げられます。しかし働き方改革は単に労働時間を減らすだけでなく、仕事の質を高め、家庭の充実や自己研鑽など「ライフ」の充実で相乗効果を出すことが求められます。つまり「生き方改革」につなげる必要があります。
仕事と介護の両立、ひいてはペットケアを見据えた生活には、高齢者ご本人、家族や親族だけでなく、官民合わせての支援体制が必要です。わんむすびとしても今後様々な業種と提携し、こうした支援に貢献できるよう努力してまいります。